7/7大塚GRECOソロ・ライヴの動画を1曲アップロードしました。
1994年のアルバム「ガネーシャの夢」に収録したBOROBUDURのNew Versionです。この曲はインドネシアのルーツを本格的に探求して行く90年代後半よりも前の曲で、画家の黒田克正氏によるライヴ・ペインティングとのコラボレーションを行ったコンサートで幻のように浮かび上がって来たボロブドゥール遺跡を見ながら即興的に紡いだメロディーを後に曲として仕立てたものでした。
2000年代以降、しばらく自分のアイデンティティー探しからは意識が離れていましたが、この数年改めて考えるようになるとともにBOROBUDURが再び重要なレパートリーとして復活して来ました。さらにこの曲に新たな光を当てる最初のきっかけは、2015年に大塚GRECOで行った映像とのコラボレーション・ライヴでした。アニメーション作家・廣安正敬氏による美しく幻想的な映像は、今回のライヴ・アルバムDivine Destinyの素晴らしいジャケット・コンセプトに繋がって行きました。
もう一つの大きなきっかけは今年の春にギタリスト宮野弘紀氏とのライヴでこの曲を初めてデュオで演奏したことです。近年ますます自分の曲はソロでしか演奏できない、あるいはしたくない聖域のようなものとして捉えていた自分にとって、デュオでの演奏はこの曲に新たな光を当てる重要なきっかけになりました。
そうして新しいストーリーが加わったBOROBUDURはソロ・ライヴの最後を担う曲としてバージョン・アップしました。
この映像はそんなNew Versionの最後の数分間です。
まだ完成形には至っていない部分があり、作曲家的見地から言うともう少し細部の書き込みをした方が良いのかもしれませんが、あえて書き込んでしまわずに楽想を水蒸気のようなもののままにしておくことで、逆にその場その場で生まれ出るものの新鮮さが際立つ場合もあります。もっとも、この演奏におけるその成功率はまだ高くないのですが。
作曲と即興のはざまで揺れ動く我が心…もちろん、聴き手に対してはそうした作者の葛藤とは関係のないところでまず美しく響いていることが重要です。